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司馬遼太郎著・「城をとる話」読了。

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 「城をとる話」

 古本屋で見つけて購入し、のべ3ヶ月以上掛かって読み終えた(間に色々他の事をやっていたので)。
 
 元々は日本経済新聞夕刊で1965年1月20日から7月12日まで連載された作品で、その年の10月光文社「カッパ・ノベルス」から単行本が刊行されて以来絶版(?)になっていたらしく司馬遼太郎全集には含まれていない。

 2002年、光文社から新たに文庫化された。



 解説によると、当時日本映画の斜陽化に対してスター俳優達は自らの独立プロダクションを設立し、中でも石原裕次郎は「何が何でも司馬氏のオリジナル原で映画を作りたい」と単身自宅まで訪れて頼み込み、結果本作が書き上げられたのだそうで。
ただ残念な事に、この時点で司馬さんが映画の為に協力出来たのは何人かの登場人物と短いプロットの構成だけだった。
 確かに石原裕次郎主演の映画・「城取り」 のあらすじを見ると原作とは少なからず展開に相違が見られる。殆ど〝名前を貸した〟状態だったものと思われ。
多分、石原プロか配給の日活側に何らかの事情で映画の完成を急ぐ必要があったのだろう。(解説より)
 因みに脚本で「一夢庵風流記」の故・隆慶一郎 氏も参加していた(本名の「池田一朗」名義)。

 本作の主人公は佐竹家牢人・車藤左で、伊達家と上杉家の国境にあって関ヶ原戦で攻防の重要な拠点となる「帝釈城」を乗っ取るべく上杉家家臣で銭愛好家、火薬の扱いに長じた堺商人、山登りの得意な山賊、拠点となる村のシンボル的存在な巫女等の協力を得て多大な犠牲を払いながらも最後には目的を-ほんの刹那の間ながら-達成するという話。

 ・・・なのだがこの車藤左、全く何も考えていない^^;。

 時に常軌を逸するとさえ思われる行動力と人間的魅力だけが取り柄な男なのである。
 「城を取る」動機もただ「取ってみたいから」という子供が玩具を欲しくなって手に取ろうとする様なレベルで恐るべき単純さ。
 その邪気の無さがまた魅力なのだろうか。身近にいて欲しくないタイプだがw。

 彼の無謀な行動に巻き込まれて仲間が死んだり-この辺りは山田風太郎チックだが死の描写はえらくあっさりしている-、多くの死ななくてもいい人間がバタバタと死んでいく。
 ハッピーエンドな映画の結末と違って(観ていないが)ラストは切ない。結局あれだけの騒ぎを起こした車藤左自身も生死は不明である。

 佐竹氏に仕えた車氏は実在するが藤左は如何にも架空の人物らしく、戦国乱世でしか登場し得ない人物造形。
 「こんなキャラあり得ないけどいたら面白いだろうな(あくまでも遠くから見てる分には。関わりたくないw)な主人公であった。

  ↓気が向いたらどぞ。
  
Commented by へいたらう at 2006-12-01 18:26
こんな本があったんですね。
初めて知りました。

石原裕次郞も、映画にするなら、司馬さんよりも、池波正太郎か誰かの方がよかったんじゃないでしょうか?
Commented by tokkey_0524zet at 2006-12-02 05:46
司馬氏は石原裕次郎が好きで「龍馬を演って貰うんなら、裕ちゃんしかおらん」と仰っていたそうですが、意外というかやっぱりというか〝メジャー志向〟だったんですねぇw。
その裕ちゃんの頼みでは断る訳にはいかなかったみたいです。
(石原裕次郎の坂本龍馬・・・見たい様な見たくない様な・・・^^;。)
by tokkey_0524zet | 2006-11-30 16:46 | 読書 | Trackback(2) | Comments(2)